ベルサイユの花の庭、王妃のボスケ

パリオリンピック2024が始まりましたね。ベルサイユはオリンピックの馬術競技場になっています。もちろん、会期中も宮殿・庭園は通常通り見学可能、緑濃い夏の庭園も魅力的です。

ところで、ベルサイユの庭園の特徴のひとつは、大きく視界がひらけたオープンなエリアと、木立で覆われたクローズドなエリアの鮮やかなコントラスト。木立で覆われた小さなガーデンはボスケ(叢林)と呼ばれます。全部で15あるボスケそれぞれの、多様なスタイル・世界観は、ベルサイユ庭園の大きな見どころとして知られます。

花が溢れる「王妃のボスケ」

今日は庭園の南側、オランジュリーの近くに位置する「王妃のボスケ」にご案内いたしましょう。かつてのル・ノートル設計のラビラント(迷宮のボスケ)の跡地に、18世紀後半マリー・アントワネットのために作られたのが「王妃のボスケ(Bosquet de la Reine)」です。長い間荒廃した状態だったものが、コロナ下の2020年から2年間をかけて修復され、花が溢れるひときわ華やかなボスケが再生しました。

ボスケは木立に囲まれ、閉じられた空間の中に独自の世界観を展開するのが魅力ですが、王妃マリー・アントワネットにふさわしく、季節毎に次々と咲き乱れる花々がこの庭の主役です。

フォーマルと自然風景のコントラスト

庭園のスタイルとしては、当時の庭園芸術の潮流をそのまま反映するような、フォーマルスタイルのレイアウトの中心部分と自然風景を追求した周辺部分のハイブリッドな構成になっています。

王妃のボスケ、ベルサイユ
周辺は森の中を散策するような気分になる、鬱蒼とした木々の間を緩やかに蛇行する小道が巡らされており、視界が開けてくると、整形式のフォーマルスタイルの世界が広がります。

王妃のボスケ、ベルサイユ
グレイかかったグリーンで統一された格子形の低いフェンスで囲まれたエリアは、多年草を中心にした草花の植栽で、庭園に華を添えます。

王妃のボスケ

庭のスターは外来の植物たち

また、18世紀はその前の世紀に続き、新世界からの外来の珍しい植物が注目され、好んで庭園に取り入れられた時代でもありました。マリー・アントワネットが好んだという、北米から伝わったユリノキが中央の碁盤の目のようにレイアウトされた並木を構成します。

王妃のボスケ
左側にそびえるのは1999年の大嵐を生き延びたレバノン杉の大樹。その下は、2020年からの修復の際に植樹された若いユリノキです(植樹時点で15年生)。植樹から数年が経ち、どんどん元気に育っています。

王妃のボスケの四季

このボスケの主役は花々だと前述しました。庭園内には様々な種類の花木のコーナーや並木が作られており、花木や草花が季節を追って次々に花盛りを迎えるので、訪れる度にわぁっと歓声をあげたくなる季節の花風景に出会えるのも楽しみです。

王妃のボスケ、キングサリ
例えば、春先のキングサリの並木のスペース。アーチではなくて、並木のように仕立てるのもなかなか良いですね。

王妃のボスケ バラ
春から初夏にかけてはバラの季節。バラの植栽はオールドローズを中心にセレクトされており、庭中に良い香りが漂う至福の季節です。

王妃のボスケ

王妃のボスケ盛夏から秋にかけては夏の多年草が大活躍。そして秋が深まりユリノキが黄葉し始めるのも美しい。

王妃のボスケ
咲き終わったバラの実の風景も素敵。

王妃のボスケ
そして冬の寒い時期に花を見せていた花木も。日本の桜の一種だそうです。ちなみにこの桜の木々はKOSEのメセナ協力で植樹が叶ったのだそうです。

王妃のボスケ 桜他に花のない時期にこの空間に行き合うと、これもハッとするサプライズに。
王妃のボスケ
かつては希少とされた外来の樹木やこだわりの品種のバラなど園芸的に興味深いセレクションがある一方、野原や森に自然に生えているような様々な植物、ワイルドローズなどがのどかな田園風景を思わせる、このバランスも絶妙です。

フランス整形式の庭園というと構造で勝負、花の植栽は少ないという印象があり、実際ベルサイユの庭園全体にはその傾向がありますが、王妃のボスケでは、花々に囲まれる感覚の喜びを十二分に感じることが出来るでしょう。ぜひ、機会があれば王妃マリー・アントワネットになった気分で散策してみていただきたい、注目のボスケです。

それではまた!

 

おまけはバラの季節、白いつるバラに覆われたボスケの入口を見上げたところ

王妃のボスケ

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