エルダーフラワー(西洋接骨木 セイヨウニワトコ)(Sambucus nigra) はフランス語でシュロ・ノワール(Le sureau noir めちゃ発音がしにくい)、イギリスでは生垣などにも使われる、よく見かける木です。フランスの田舎にも方々にさりげなく生えていて、5月になると一気に白い花を咲かせ始めます。少しクリーム色がかった小さな花が集まって大きな花のかたまりになるその姿はとってもキュート。
初夏を告げる白い花々
この時期の南仏プロヴァンスの田舎道では、アカシアの白い花の房がさがり、サンザシやコデマリの花が満開になり、さらにエルダーフラワーが咲き始める、白い花々の風景は、まさに初夏の訪れを感じさせます。
春先には、太陽の光そのもののような黄色の花が眩しく見えるのですが、初夏に思いを馳せるこの時期には、今度は白色の花々が、柔らかな新緑を背景に光を集めて輝きを増すように思われます。
5月のリュベロンの田舎道から。手前左は花満開のアカシアの木、その奥にエルダーやサンザシが続きます。右手奥は鷹巣型のボニューの村。
ケルト伝承の魔法の木、エルダーフラワー
ところで、映画ハリーポッターに出てくる最強の魔法使いの杖が、エルダーフラワーの木から作られていたのはご存じでしょうか?エルダーはアングロ・サクソン語で火を意味する「エルド」から来た言葉だそうですが、エルダーは妖精が住むと言われるケルトの魔法の木でもあり、人間世界と魔法世界を繋ぐ、また強力な魔除けの効果をもつカッコいい木でもあるのです。
美容にも健康にも万能な植物、エルダーフラワー
気がつけば身のまわりにある野生のエルダーフラワーには、西洋では古来より利用されて来た有用ハーブという面もあります。優しく爽やかさのある香りのエルダーフラワーは、風邪やインフルエンザの初期症状や喉の痛みなどを和らげ、また発汗作用や利尿作用で粘膜を浄化するデトックス効果、さらに緊張をほぐし安眠を助けるリラックス効果もある、優秀な薬草でもあるのです。花をドライにすれば、手軽にハーブティーが出来ますし、また、エルダーフラワー・コーディアル(シロップ)の形でも入手できます。
そうしたことは知らずとも、かつてエルダフラワー・コーディアルのドリンクを最初に発見したのは、随分昔のイギリスのカフェでした。優しい甘さで結構美味しくて、お気に入りになったのを覚えています。フランスでは田舎道で結構とエルダーフラワーを見かけることに気付いて以来、いつかホームメイドしてみたいものだという、野望を抱くように(笑)。
夏のおもてなしはエルダーフラワードリンクで
とはいえ毎年花が咲いているなあ〜と思っている間に夏になってしまっていたのですが、今年こそはタイミングを外さずに花を摘んでくることができました!ということで、初エルダフラワー・コーディアル作りに挑戦してみます♫
(花房のみを鋏を使って採取しました。とっても良いかおり!)
作り方はイギリス本格派らしい、こちらのレシピを参考にさせていただきました。
英国ハイクレア城に暮らす伯爵夫人がご指導くださるレシピで、特に変わった材料も必要なく、プロセスもごくシンプル。(レシピにあったクエン酸はすぐに見つからなかったので、レモン増量で対応しました。レモンはニース産の無農薬レモンです。)これで軽く2リットル以上のホームメイドのエルダフラワー・コーディアルが出来上がります。
24時間花をシロップ液につけたところ。
綺麗な黄金色のシロップになります。
エルダーフラワーのシロップを炭酸水で割ったドリンクは優しく爽やかな味で、夏のおもてなしにもぴったり。
最近はアルコールを飲みたくないという方も多いので、大活躍間違いなし、盛夏を迎えるのが楽しみにしなってきます!
(ちなみに風邪気味の時に薬効を期待する場合は、炭酸水割り等ではなく、お湯で割って暖かくして飲むのが正解です。)
エルダーフラワーを育ててみよう
フランスの田舎ではその辺に生えている植物ですが、庭の一角に、またはポタジェにも、ワイルドな雰囲気と季節感を運んでくれるエルダーフラワーツリーは、ぜひ植えて育ててみたい植物のひとつです。野生でぐんぐん育つ壮健な樹種なので、環境が合う場所でならどんどん育ってくれそうです。