春になって嬉しいのは、スイセンやチューリップなどの球根花、枝物の桃や桜、りんごの花などから始まり、露地栽培の切花に出会える季節になってくること。さっそく、季節とともに再オープンした週末のモントルイユの花農場を覗いてみました♫
モントルイユはパリの東隣、市内と言っても良いくらい中心へのアクセスも良く、エスニックな雰囲気もありながら芸術系の住民なども多い街。かつては桃の生産で知られた場所で、ミュール・ア・ペッシュ(Murs à pêches 桃の壁、仏語でミュールは壁、ペッシュは桃のこと)と呼ばれる、壁に囲まれた桃畑が延々と続く桃の一大生産地だった歴史があります。
花農場ミュール・ア・フルール(花の壁)
桃畑を囲む壁は、エスパリエ仕立ての桃の木の支持体となり、また冷たい風を遮って日中の陽光で上がった温度を保つ、桃栽培成功のカギでした。が、時代の推移によって桃生産が行われなくなって久しく、桃の壁は崩れるがままになっていた時期もあります。
近年になって都市農業に注目が集まってきたのを反映し、現在は桃の壁の跡地には、シェア・ガーデンに転用された近隣住民によるポタジェでの野菜作りが行われていたり、都市農業用地としての活用に向けられるなどで、再び活気が戻ってきています。
↑花農場を入ったところ、右手に見えるのはかつての桃の壁。崩れかけた感じにも味があって良いなあ、と思ったり。
このような流れの中で、季節の花をサスティナブルにローカルに栽培する、いわゆるスローフラワーの花農場ミュール・ア・フルールが誕生してから4年が経ちます。
季節に沿った切花の栽培
灌水装置のラインと、早春の球根花チューリップとスイセンがぎっしり並んで花ざかり。早咲きや遅咲き、球根を仕込むタイミングによって多少のタイミングのコントロールはできるとしても、まさに今の花風景が見られるのは貴重。
というのも、街のマルシェや花屋さん、スーパーマーケットで買える切花の大半は、遠方の温室で集約的に生産されていて、季節感自体が消え去っている場合が多いのです。
レイズドベッド仕立てになった区画ではランキュラナスも花盛り。
さらに畑のサプライズはリンゴの花。枝ものが入るとブーケも一気に華やかさを増すような。
ここでは季節そのものの花を発見し、新鮮なブーケを持ち帰ることができます。
畑の他の場所には、芍薬がすくすくと育っていました。花をみられるのはあと1ヶ月後以降でしょうか。。。想像するだけでワクワクしてきます。
花畑の友
さて、農場では花苗、切花ばかりでなく、蜂蜜屋さんも開店していました。
というのも、この花畑を間借りして養蜂する都会の蜂蜜屋さん。化学肥料や化学薬品類は不使用、パーマカルチャーなどの自然農法の手法を取り入れて栽培している花々から採れる蜂蜜です。
季節によって取れる蜂蜜はバリエーションに富んでいて、アカシアの花の蜂蜜は透明でさらっとしていて、栗の木の蜂蜜、菜の花などはずっと濃い色のペースト状に近い感じ。ビーポレン(ミツバチが集めた花粉)もあって、せっかくなので、私はアカシア蜂蜜とビーポレンを購入してみました。
畑の奥に設置してある養蜂箱。ロックなデザインには、パリっぽさを感じますね。
季節とともに巡る花ビジネスモデル
この花農場では、春から秋の切花栽培期間には、栽培のみならず、養蜂業者を入れたり、パーマカルチャーや、子どもが自然と親しむためのワークショップなどを開いたり、と様々なイベントを行なっています。
↑様々な植物や昆虫に出会う子ども向けワークショップで、専門ナビゲーターとともに畑をさんぽする子どもたち。
また、個人や企業向けに月ごとに花が届けられる定期購入などのプランもあり、好評の様子。
大都市近郊であることを生かして、切花栽培を中心にしたビジネスの多角展開を行なっています。この多角展開は季節にもまたがっていて、切花の生産が休止する冬の間は、パリのアトリエ兼ブティックがオープンし、畑で採れた花で作るドライフラワーや、フレグランスなどを販売しているのだそう。なるほど、よく考えられた展開です。ただ切花を栽培するばかりでなく、生産されたスローフラワーを活かして積極的に他のアクティビティやプロダクトにも繋げていく、こうした業態が増えているのかもしれませんね。なるほどな、と思います。
それではまた!
ご紹介したミュール・ア・フルールのHPはこちらから
◉Murs à Fleurs