プロヴァンスの春の到来を告げるアーモンドの花
南仏プロヴァンスの3月、そろそろ春らしい日差しが眩しくなってきました。まだ冬枯れた色合いの風景の中にパッと現れるのが花盛りを迎えたアーモンドの木々です。昔から、アーモンドの花はプロヴァンスでは春を告げる花として愛されてきました。
ギリシア人の胡桃の木
プロヴァンスには、アーモンド畑もあれば、ガリーグ(灌木林)に自生するアーモンドの木もあり、風景に自然に馴染む姿に自生種と思っている人も多いようなのですが、実はアーモンドの木は西アジア原産。中近東を通ってギリシアに伝わり、紀元前5世紀頃にギリシア人が南仏プロヴァンスにアーモンドの木を伝えたと言われています。ローマ人はアーモンドを「ギリシア人の胡桃の木」と呼んでいたのだとか。暖かく日差しが強く乾燥したプロヴァンスの気候、特にどんな石ころだらけの土壌でも育つアーモンドの木は、プロヴァンスの土地に完璧に順応して、欠かせない風景の一部となりました。
樹木としての寿命は平均100年ほどと、比較的長寿の木です。老齢のアーモンドの木のシルエットには、画家ゴッホが描いたアーモンドの花の絵を彷彿とさせる、ウメやサクラの古木を思わせる味わいを感じます。
ちなみに、遠目に見ると桜によく似た雰囲気のアーモンドの木ですが、実は桃の仲間です。確かに花の後に出てくる葉っぱは桃っぽいです。
南仏プロヴァンスの食文化に根付くアーモンド
導入は紀元前だったものの、フランスでの生産や食用が飛躍的に増えたのは中世になってからだそうで、シャルルマーニュが王の農園にアーモンドの木を植えさせたのもこの頃です。現在の生産高世界一はカリフォルニアですが、プロヴァンス産のアーモンドはその質の高さで知られています。またプロヴァンスのノエル(クリスマス)を祝うのに欠かせない、13のデザートにも必ず含まれるアーモンドの実は、例えばエクス・アン・プロヴァンスを中心にしたプロヴァンス名産のアーモンド菓子のカリソンやリキュールなど、長い歳月をかけてプロヴァンスの食文化に欠かせないものになっています。
健康と長寿のレメディ、アーモンド
アーモンドは多くの不飽和酸脂肪やビタミンEやビタミンB2、植物繊維、マグネシウム、リボフラビン、リンなどの健康維持に役立つ栄養素が豊富に含まれています。ビタミンEには「抗酸化作用」があり、つまりアンチ・エイジングの強い味方。不飽和酸脂肪には悪玉コレストロールを低減させる「オレイン酸」が含まれ、また血圧を下げる効果がある「リノール酸」も含まれています。さらにゴボウの倍量が含まれるという植物繊維には便秘防止の効果、その他含まれる微量のミネラルには鉄分もあり、むくみや貧血の予防にもなる万能食品です。
とはいえ食べ過ぎは禁物、1日の適量は20〜25粒程度だそうですが、そういえば、かつてアーユルヴェーダの診断を受けたときに、アーモンドを1日3粒食べなさい、と言われたことを思い出しました。体の大きさや体質によっても必要度は異なってくるのだと思いますが、節度を持ちつつ、積極的に日常に取り入れたいナッツですね。