英国人写真家マイケル・ケンナ
静謐なモノクロの風景写真で知られる、英国人者写真家マイケル・ケンナ(Michael Kenna 1953~ )の名前には、聞き覚えがある方も多いのではないでしょうか。日本では北海道に毎年のように何度も訪れてその風景を撮った作品集「HOKKAIDO」もあります。
雪景色の湖畔に佇む一本のミズナラの木の姿の、さながらポートレートのような美しい写真は特に印象的で、このミズナラはファンの間で「ケンナの木」として愛されるようになりました。が、倒木の危険性があったため、伐採されてしまったというエピソードもあります。
日の出や日暮れ時、霧の中などで長い露出時間を取って撮影することが多いその写真には、知っているはずの風景が肉眼では見えなかった重層的な美を纏って現れる、驚きと感動があります。
ケンナとフランスの風景
フランスはケンナの50年来のお気に入りの撮影地であり、自然風景またその中に人為の痕跡が見える歴史的な街並みや庭園を、彼独特の世界観の中に取り込んだ作品を撮影し続けてきました。パリやモン・サン・ミシェルといった著名な観光地やヴェルサイユなどのル・ノートルによるフランス整形式庭園などに、実際に目にするときともまた違う、息を呑むような静謐の美を見ることができます。
ランブイエ城の「フランスの旅」
先日訪れたランブイエ城の城内では、「フランスの旅」と題した展覧会でケンナのフランスの風景写真が展示されていました。
ハッセルブラッド中判カメラを愛用して撮影しているというオリジナル写真は、焼き付けもすべて本人が行っているのだそうです。写真の判型は小さいですが、しっかり近づいて鑑賞できます。多色使いの大理石の部屋にモノクロの写真の展示のコントラストも悪くない。
作品が小さいので、展示風景からだけだと作品の様子を伺うのが難しいかもしれませんが、展示の写真は、作品集「FRANCE」の中に収められています。
例えば、作品集の中の、パリのポンデザール橋の写真。セーヌ川上、ルーヴル美術館とボザール(フランスの芸大に当たる大学)の間にかかるこの橋は、普段は沢山の人で賑わっている場所ですが、まったく違う幻想的な姿にうっとりです。
展示室に備えてあった作品集を捲りながら、実際に展示を見ることが難しくても、元々が小判型の写真作品なので、写真集でもゆっくり楽しめるかなとも思いました。さながら幻想のフランスの旅に誘われるよう。
こちらは上階の木目板で囲まれた展示室。
ケンナは「Le Notre`s Gardens(ル・ノートルの庭園)」という作品集も出しているほどで、私も普段からよく訪れるヴェルサイユやヴォー・ル・ヴィコント城の庭園などをはじめとしたフランス庭園を撮影した写真もまた素晴らしいです。
庭園そのものも芸術ですが、見慣れた風景そのままではなく、そのエッセンスをまた別の形昇華した徹底的に美的な表現には本当に感動します。
◉作家のサイトでもイメージを見ることができるので
気になった方はぜひ下をクリックしてみてください。
>>マイケル・ケンナ公式HP[フランスの風景1980〜2022]
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