ブルーアトラスシーダーの母なる大樹
パリ郊外、ヴァレオールー(Vallée-aux-loupes 直訳するとオオカミ谷、ちょっと怖いけど童話に出てきそうなカワイイ名前とも言える)の樹木園(アルボレトム)は、19世紀に植樹された、歴史的にも興味深い希少な木々が見られる庭園です。
ここで、シダレのブルーアトラスシーダーのびっくりする大木に出会いました。
この地に移植されたのが1895年で推定ほぼ150歳、幹回りは5m弱、樹冠の面積は700㎡にもなる、大きな大きな家のような木です。
正確には枝垂れのブルーアトラスシーダー(Cedrus atlantica glauca pendula)で、原産地は北アフリカのアトラス山地、このような枝垂型は突然変異によるものとのこと。この木がヨーロッパ中に普及した枝垂れのブルーアトラスシーダーの元の木になっているのだそうです。道理で、歴史的な庭園や公園に植樹されているのを見かけることはありますが、このような形のここまで大きな木にはなかなかお目にかかれません。
よく見ると屋根(?)には松ぼっくりもたくさんついています。針葉のブルーがかった色合いも素敵。
それにしてもまるで童話に出てくる魔法の木のようで、枝垂る枝野下を通るのもなんだかワクワクしてきます。
フランスの素晴らしい木大賞を受賞
ちなみにこの木は2015年にイルドフランス地方の「フランスの素晴らしい木賞」を授与されています。歴史的経緯や樹種の希少性や大きさなどの評価基準の他に、この章の選考で大事にされているのが、人との関係性。なるべく人を避けて写真を撮りましたが、確かに、大人も子どももこの木を見ると、必ず樹間の中に入るとしばらくは出てこないのです(笑)。大勢の人がいても、全員まとめて包み込んでくれるような、おおらかな包容力が素晴らしい。
樹冠の下に溢れる光の空間
こちらはワクワクの木の下に入って見えてくる風景の一部。
木陰なのだけれども、鬱蒼と暗いのではなく
かえって木漏れ日の光そのものを感じられる
美しく心地よく、フワッと落ち着き、
いつまでも座っていたくなる空間です。
枝の支柱はこの木のために作られた彫刻家の作品で、
さりげなく支えの機能を果たしつつ、
環境にも美的に溶け込んでいます。
さらに荒天の際に動いてしまう枝の保護も配慮して設計されているのだそうです。
このアトラスシーダが位置するのは池の辺り直ぐの場所。成長のための水にも恵まれ稀有な大木に成長したのでしょう。
横の池にかかる鋼鉄製の橋は、エッフェル塔のデザインを思わせます。
園内には、他にも19世紀当時に好まれた樹種が多数植栽されており、昔日の面影がそこかしこに感じられます。
水辺の風景
去り難いブルーアトラスシーダーの樹間を抜けると、またさらに面白い風景。
ニョロニョロみたい!と目を奪われました。
これも樹木の(樹種は忘れてしまったのですが(汗))根の部分が変形したもの、水辺でよく起こる現象で、こんなファンタジックなニョロニョロが発生します。これも童話に出てきそう。
目がハートになりながら、さらに歩を進めると。
春一番、フキノトウを発見!
私はすごーく盛り上がりましたが、同行のフランスの友人は全然反応していなかったので、フキノトウに春を感じるのは日本文化独特の感性のようです。
ところで、19世紀のフランスには、ジャポニズムがブームになった時期があり、日本風の庭園が作られたり、日本的な植物や盆栽が流行しました。歴史的な庭園には、日本的とも言える樹種が多く使われていたのを見ることがあるのも興味深いです。
ではまた!