ルイ14世とルノートルのコラボレーション
宮殿北側のパルテールを下った位置する、1667年につくられた三つの噴水のボスケは、唯一ルイ14世のアイディアで、造園家ルノートルが設計したものと伝わるボスケです。
王とルノートルの間には、友情とも呼べるような信頼関係が築かれていたと言います。そういえば、並外れた庭園が作られた舞台裏には、しばしば施主と造園家の間の相互の信頼関係やお互いへの感化があるように思います。
クラシカルなイタリア風の噴水テラス
さて、ルイ14世自ら執筆したヴェルサイユの庭園案内に従えば、まずは3段テラスの上の方の入口からボスケに入り、テラスを降りて、ドラゴンの泉水の方向へ抜けるのが、おすすめの順路だそう。
上方から下方を眺める
イタリアの庭園を思わせるテラスを重ねた構成に、装飾は噴水のある泉水と刈込みの植栽のみという非常にシンプルな作りのこのボスケ、小さいながらも、ルノートル庭園の特徴が詰め込まれた空間になっています。
ルノートルらしさあふれるボスケ
というのは、例えば、上から見ると、ボスケの空間は奥に長く広がって見え、下から見上げるとその逆という風に、ルノートルらしい視覚の遊びが隠されています。
中央の軸線上に立って眺めれば、美しく整った水の花束のようにまとまった噴水が、角度を変えて眺めると、吹き上げる水はいろんな方向に自由に広がっている様子に変化するよう設えられているのも、ルノートルの企みです。
最下段の噴水を正面より眺める
ボスケの中では唯一、彫像などの装飾は省かれたミニマリストなデザインなのですが、とはいえ泉水の縁や通路の地模様などは小石や貝殻を埋め込むロカイユと呼ばれるスタイルの飾りが温かみを添えています。
さりげなくぎっしり噴水を飾るロカイユ装飾に注目
歴史的ボスケのリノベーション
ちなみにこのボスケは20年ほど前の全面的な復元リノベーションを経て、現在の姿を取り戻しました。というのは、ボスケの装飾や噴水は繊細なものが多く、完成後のメンテナンスがままならずに、数十年で失くなってしまったもの、また、作り変えられてしまったものなども沢山あります。植栽を中心にした自然風の庭園に比べると、変化が少ないように見えるフォーマル・ガーデンも、やはり歳月の経過とともにやってくる変化の必要性に晒されています。そのままの形を残すのか、あるいは、変えていくのか、は常に議論されるところですが、ルノートルの作庭の特徴がたくさん詰まった三つの噴水のボスケは、現在も最初の作庭当時の姿を鑑賞できる貴重なボスケと言えるでしょう。
ボスケ内部周辺のツゲの刈込みを手入れするジャルディニエ(庭師)たち。
まとめ
庭園内では立地が比較的地味ながらも、実は庭園全体の噴水の消費水量の3分の1を占めるという水量を誇る噴水を擁するこのボスケ、見学する際には、ぜひ上から下へテラスを降りてみましょう。そして、噴水は、中心軸線に立ってみたり、傍から眺めたりと位置を変えることで、印象がググッと変わるのが面白いので、ぜひ色々な角度から眺めてみてください。