南仏の珠玉のボタニカル・ガーデン
南仏コート・ダジュールは、古くから世界中の富裕層を惹きつけるリュクスな別荘地で、美しいヴィラが沢山作られた場所です。そこかしこにブーゲンビリアやヤシの木が茂る緑豊かな景観を作り出す温暖な気候は、新大陸やアジアなど遠方から集めてきた希少な植物を適応させ根付かせるのにも最適だったゆえ、そうした多くのヴィラとともに、エキゾチックな植物が豊かに繁茂する美しい庭園が作られました。
中でも間違いなく珠玉のガーデンと言えるのが、英国の名園ヒドコート・マナーを作庭したフランス育ちのアメリカ人、ローレンス・ジョンソンが最晩年を過ごしたマントンの街に作ったセール・ド・ラ・マドンヌ庭園です。園内にはジョンソン自らプランツ・ハンティングに出かけて収集してきた様々な植物が散りばめられていて、その植物たちの繁茂する様が、この庭園の最大の魅力です。
緑溢れるイタリア式テラスガーデン
ジョンストンはアーツ&クラフト・スタイルをガーデンに持ち込んだ立役者の一人として知られています。元々は農業用地だった比較的険しい段丘地形に沿って作られた9ヘクタールほどのガーデンの構造は、イタリア式テラスガーデン・スタイルに、コーナーごとに異なる樹種、高さに生垣を用いたりして、それぞれに違った雰囲気の小さな庭が次から次へと連続していくようなしつらいになっていて、小道の突き当たりには必ずフォーカルポイントのアンティークの彫刻やレリーフがあり、周囲の植栽と合わさってピトレスクなシーンを演出。端正でクラッシックなレイアウトの上に、伸びやかに繁茂する植物の様子が、なんともいい感じにナチュラルな雰囲気を醸し出しているのが素晴らしい。散策路は比較的狭く設定されているゆえ、歩を進める度に植物を身近に感じながら散策することができ、いつの間にか豊かな草花の風景の中に迷い込んだような不思議な感覚になってきます。
アーチの道を抜ける。
所々のフォーカルポイントにアンティークな泉や彫像が、いい雰囲気を醸し出す。
苔むした地面のテクスチャーも、なんともいい。
右に左にとウロウロしながら段々とテラスを上がって、ヴィラの建物が見える中央あたりまでやってくると、庭園のビスタ(中心軸)もしっかり設定されているのが分かります。
中心軸の通った端正の左右対象の構成。ここでは上から被さる葉っぱでよく見えないですが、上の方、奥には母屋の建物が見えてきます。
天井にも、周りにも、気がつくとそれぞれに個性的な様々な木々や草花に埋め尽くされる、人間のためというよりも、植物のための庭、のよう。
近年は日本でも一般化しているオージープランツも色々発見、こちらは木生羊歯、ディクソニア。こんな所にも。イギリスではずっと人気の様子なので、ここにチョイスされているのはごく自然といえばそうかもしれません。
[続く]