フランスのバラ育種家の物語
フランスの国民的大女優カトリーヌ・フロが主人公のバラ育種家を演ずる映画「ローズメイカー 奇跡のバラ」。日本では5月末からすでに上映されていたので、もうご覧になった方もいらっしゃるでしょうか。フランスでは6月末からの上映で(フランス映画なのに、日本の方が早く始まってる!)、このために、先だってからようやく再オープンしている映画館に久しぶりに足を運びました。
評価がまあまあだったので、通常ならスキップしてしまう可能性も大だったのですが、バラのナーサリーの話だし、カトリーヌ・フロも大好きだし(主演作は「大統領の料理人」など)個人的にはマストだったのです。で、やっぱり良かった。ストーリーが単純とか、ツッコミどころはあるでしょうが、バガテル国際バラ新品種コンクールの様子や、ローズナーサリーのバラ畑、どんな風にバラの品種交配を行っているのかなど、バラ育種の様子を一緒に間近でバーチャル体験できます。バラ好き、園芸好きの方には本当にオススメです。
バガテル国際バラ新品種コンクールって?
映画には、毎年行われるバガテル国際バラ新品種コンクールのシーンが出てきます。舞台となるのはパリのバガテル公園のバラ園。このコンクールは1907年から続く、世界最古かつ最高峰のモダン・ローズの新品種の登竜門。世界のローズナーサリーがしのぎを削る中、入賞するバラを作出するのは容易なことではありません。
毎年6月第3木曜日に行われる審査では、バガテル公園のバラ園に無記名で植えられたコンクール参加の100種以上のバラの中から、花のクオリティ、美しさはさることながら、その香り、花の量や花持ちがするかどうか、病気に強いかなどのすべての基準をクリアしたオリジナリティの高い新作モダン・ローズがその年の金賞に輝きます。これはバラ自身にとって、作出するバラの育種家にとって、最高に名誉なことなのはいうまでもありません。また、専門家による審査だけでなく、一般市民や子どもたちからの人気賞というのもあります。
コンクールの会場となるバガテルのバラ園の様子。コンクールの新種モダン・ローズだけでなく、膨大なバラのコレクションが咲き乱れるフォーマル・ガーデン。
花といえばバラ、バラ人気はいつから始まった?
数々の花の中でも女王格のバラの花。古くはローマ時代から香料や薬を作るために栽培されていたバラ。19世紀のフランスでモダン・ローズが生まれ、ヨーロッパ中で大人気の花となる前も、その香料・薬効のために大切にされてきました。そして現在、かつては生産の中心地だったヨーロッパから、バラの生産の中心地は、ケニアや南アフリカなどに移っています。ちなみに、バレンタインデーやクリスマスなどがピークとなるバラのマーケットは、なんと花栽培面積の1/4を占めるのだそうです。
バラには様々な系統・品種があります。ロザリアンにとってはそこが大変に面白いのですが、逆に一般的には分かりにくい、近づきにくい、と感じてしまうことも。
個人的には、原種やオールドローズ系のバラが好みで、モダン・ローズは完璧に美しいけれども、逆に整い過ぎで、どこか人工的な感じがしてしまってあまり親しみが持てなかったのですが、この映画を観て、モダン・ローズを生み出すその愛情と情熱に触れ、これはまたすごい、素晴らしい〜、と感化されてしまいました。
それと、父から引き継いだ名門バラ園を背負い、ひたすら新種のバラを追求し、それしか見ないで独り人生を走ってきた主人公のエブが、物語の中で呟いた言葉が心に響きます。
「美のない人生なんて、何よ!?(そんなのありえない!)」