パリでも人気のおしゃれ地区マレにある国立古文書館の庭、実はとっておきの隠れ家ガーデンです。国立古文書館(les Archives Natinales)というとお堅い印象ですが、かつての貴族の邸宅スービーズ館とロナン館をはじめとしたいくつかの歴史的建築物を使っていて、現在では、建物の一部をミュージアムとして公開しており、古文書の閲覧でなくとも一般の人も見学することが可能です。
ロココ様式の室内装飾の建物と現代のデザインの庭園
スービース館は、18世紀ロココ様式の優雅な室内装飾を今に伝える建築物でもあり、見学価値は十分。しかしさらに素敵なのが、館を囲む庭園だったりします。国立古文書館の公開に合わせて整備された庭園のデザインは、フランスの人気ペイザジスト、ルイ・ベネシュによるもの。かつて17世紀にはル・ノートルの手も加わったという庭園の歴史と建築のスタイルを尊重しつつ、現代の感性で新たに創られた庭空間は、繊細かつアンチームで美しい。
この庭の好きなところはまず、入らないと分からないところ。人通りの多いフラン・ブルジョワ通りに面したスービース館への入口から覗けるのは、芝生にザ・フランス整形式のとんがりコーンのようなトピアリーが楚々と並ぶ前庭です。そこだけ覗くと、整っていてきれいだけれど若干つまらなそう、にも見えます。けれど、芝生の中の植栽には意外とナチュラル感が漂っていて、何か少し違いそうな気もしてくる。やはりちょっと入ってみよう、と入口の警備員さんに挨拶をして中に入る。
サプライズ感とアンチームな雰囲気が魅力の庭園
そして回廊の奥に進むと、ようやく次の庭への小さな入口が見えます。知らなければ、おや、まだ続きがあったのね、くらいな感じです。緑に囲まれた最初の庭は邸宅の庭らしい、プライベート感あふれる空間です。初めて訪れたときには、建物に向かう遠路を縁取るアジサイの花が、上品な華やかさを添えていたのが印象的でした。
こじんまりとした池も設えられ、草花もたくさん植栽されています。
かっちりした刈り込みの縁取りの中に、少々ワイルドを感じさせるような軽やかな草花がそよいでいるのを眺めるように置かれたベンチもあり、どこかのお宅の庭にそっとくつろいでいるような気分になれる場所です。そのせいか、カップルとの遭遇率高し。
さて、こじんまりとした邸宅の庭を抜けると、今度は緑の隙間にベンチが並ぶ、落ち着いたパブリック感のある空間に出ます。こちらは主に花の咲く樹木を中心に植栽されているので、季節によっては緑の葉っぱの色や適すチャーのグラデーションのみになりますが、それもシンプルでいい感じです。緑に囲まれたベンチで語らう人々、ひとり読書する人など、思い思いに過ごせます。
さらにこちらは、クラシカルな建築と端正な刈込みの前に広がる、ワイルドフラワーの草原を思わせるナチュラルな空間が、いまどきの庭を感っぽい。
まとめ
一歩園内に踏み込めば、人気のマレ地区の喧騒を一気に忘れるような静けさの中、思いもかけなかったような、コーナーによって違う雰囲気の庭を散策できるサプライズ感、全体をまとめる上品でスタイリッシュな空間性がこの庭園の魅力です。思い切って門をくぐってみない手はないのです。
●アクセス案内
フランス国立古文書館パリ館
Archives Nationals
60 Rue des Francs Bourgeois, 75003 Paris
最寄駅
メトロ / RER: Hôtel de Ville, Rambuteau, Saint-Paul, Châtelet-les Halles, Arts-et-Métiers.
バス: 29, 58, 67, 69, 70, 72, 74, 75, 76, 96.
開館時間|
月〜日(火及び祝祭日休館)
平日: 10am ~ 5:30pm
土日: 2pm to 5:30pm
(2020年12月10日時点)