8月の王の菜園(ポタジェ・デュ・ロワ)

真夏日の王の菜園、今日は気温も38℃まで上がっていました。
このところの猛暑日は温暖化をひしひしと感じさせます。

王の菜園の名物、様々な形のエスパリエ仕立ての洋ナシやリンゴの木々は
たたわに実がなって、そろそろ収穫期を迎えるところです。


王の菜園 

この春は公園・庭園等もコロナ対策で閉園せざるを得なかったフランスですが、
6月下旬~7月からはほぼ再開していて、
(要事前予約等、通常と異なる入場制限があることが多いので要注意です。)
ヴェルサイユの王の菜園ではガイド付き園内ツアーも再開されています。

促成栽培で名高い王の菜園 17世紀


王の菜園の経緯を復習すると、
ルイ14世の食卓に新鮮な野菜や果物を供給するために作られた、
名前の通りの王様のための菜園(ポタジェ)です。
その後3世紀近くの間、
フランス革命やら様々な時代に渡って、
常に野菜果物の栽培が続く、菜園であり続けてきました。

王様のための菜園なので、
もちろん他とはちょっと違う贅沢さがあります。
17世紀の創設当時の最大のウリは「促成栽培」でした。

菜園の全景、中心の噴水を囲んで幾何学的な正方形を連ねるような構成

 

ガラスの温室などはまだ存在しなかった当時、
菜園は全体を壁で囲んで作られましたが、
この壁が北風から菜園を守り、昼間の太陽の熱を蓄えて、
菜園に比較的穏やかな微気候を作ります。
中心部の野菜栽培の区画がさらに一段掘り下げて作られているのも、
やはり温度変化を穏やかに、暖かく保つ工夫からでした。

さらに、王の厩から出る馬糞を堆肥として用いて、
分解の時に発散される熱で、作物の生育環境を暖かく保ちました。
現在はすでになくなっていますが、促成栽培のイチジク畑などがあり、
露地物と合わせて1年のうち半年はイチジクが収穫できたのだそう。

(ところで、なぜそこまでイチジクの栽培に力が入っていたのか?
もちろん、ルイ14世の好物だったからです。
元々はイチゴ好きだったのが、ある時アレルギーになってしまい、
(きっと一生分のイチゴを食べ尽くしてしまったのでしょう)
その後はイチジクがお好みとなったそうです。)

その他にも12月にアスパラガスが収穫できるなど
当時としては魔法のような促成栽培の技を持った菜園だったのでした。

18世紀、フランスで食関連の最新流行は何だった?

こちらは18世紀、ルイ15世の頃に作られたスタイルの
ガラスを用いた温室の第一世代モデルです。
この形の音質が残るのは現在ごく一部ですが、
当時はこうした温室がずっと長く続いていたとのこと。
このスタイルの温室はオランダから入ってきたのだそうですが、
半アーチのフォルムは今でも素敵ですね。

ところで、18世紀当時のこちらの温室では
一体何を栽培していたのでしょうか?

当時のア・ラ・モード(最新流行)のプロダクトは、
なんと南米から伝わった「コーヒー」でした。
(カカオの栽培には至らなかったようですね。)
それからやはりトロピカルなフルーツの「パイナップル」。
かなりの数を生産できたようです。

19世紀にはもっとモダンな温室が大幅に増えました。
今もその場所には温室があり(もっと近代化されています)、
一部は学生の休憩室となっていたり、
冬にはハーブなど、栽培も行われています。

現在の温室、落書きがカワイイ

 

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