明るい太陽を感じる春分間近の南仏プロヴァンス地方、
気がつくと、すでに
アプリコットやアーモンドの花は終わりかけのようです。
こちらはおそらくアーモンドの木。
そういえばアルル、サン=レミ時代のゴッホの作品にも
アーモンドの木が印象的に描かれていました。
日差しはもう眩しいくらい。
夏だったら日光が強すぎて
昼下がりの散策はちょっと厳しそうですが
春先はまだいけます。
とはいえ白亜の地面と様々な緑と太陽の光が織りなす風景は
もはや夏のようでもあります。
影の濃さから、光の強さもうかがえるのではないでしょうか。
さて、今日も植物観察にいそしんでおります。
灌木の林の中でよく目にするのは
野生のセイヨウツゲの木々(Boxwood, Buxus)です。
トピアリーや生垣などの
様々に造形された刈込み姿で庭園を飾るツゲも
自由にウネウネ育っていると
まったく違う植物のよう。
細かな硬質の葉が光を反射する様がとても美しい。
そういえば近年フランスでは、
セイヨウツゲの害虫被害が深刻です。
というのは、
アジアから入ってきた毛虫ツゲメイガ(pyrale du buis)が
至る所でセイヨウツゲを食い荒らし枯らせていて
大問題になっています。
例えば、ル・ノートルの代表作のひとつ
ヴォー=ル=ヴィコント城庭園の
ツゲで形作られた刺繍花壇も毛虫被害がおさまらず、
これから数年をかけて修復されることになっています。
同じプロヴァンス地方でも、場所によっては
野生のセイヨウツゲも食い荒らされ
すべて立ち枯れているのを目撃したこともありますが、
ここはまだ大丈夫みたいです。
いつまでも大丈夫であってほしい。
そして、もう少し背が高い木でよく見かけるのが
セイヨウヒイラギガシ(Chêne vert, Quercus ilex L.)。
南仏の代表的な樹木ですが、
乾燥に強いということで、
最近ではパリでも植栽されることが増えてきたようです。
カルチエ現代美術財団のガーデンでも
この木を植栽に加えていました。
近年の温暖化に対応するために、
パリなどのイル=ド=フランス地方でも
暑さや乾燥に強い樹種が求められるようになってきており、
元々そうした性質を持った地中海の植物たちに
熱い視線が集まっています。
日差しがよく当たっていそうな小道の脇には
乾燥に強く、肥料入らずの万能ハーブ、
野生のローズマリーもたくさん生えていました。
タイムとともに、プロヴァンス風料理には欠かせない
エルブ・ド・プロヴァンスの材料にもなります。
リュベロンの山並みを時々目にしながらの散策は
南仏プロヴァンスの原風景のなかを
歩いているような感じでしょうか。
暖かな日差しのような、
乾いたハーブと土のかおりが
この土地のかおりのように思います。
出来上がった庭園を訪れるばかりでなく
自然のなかを歩いて、
風景と植物たちに出会う。
庭づくりのインスピレーションもいっぱいの
至福のひとときです。