フランス式整形庭園、好きですか?

フランス式庭園、というと
軸線を中心にしたシンメトリーで幾何学的な構成の
整形式庭園(フォーマル・ガーデン)を指し、
フランス整形式庭園とも呼ばれます。

17世紀にフランスの造園家ル・ノートルが
太陽王ルイ14世のために設計した
ヴェルサイユ宮殿の庭園などが世界的に知られる代表例です。
フランス式庭園は、
絶対君主制時代のイギリスなどをはじめとした周辺の
ヨーロッパ各国の王侯貴族の庭園で大流行しました。
現代ではもちろんフランスにも
ナチュラリスティックなガーデンがたくさんありますが、
フランス式庭園(フレンチ・ガーデン)というと
やはり、この歴史的な庭園のスタイルを誰もが思い浮かべます。


↑ヴェルサイユ宮殿の庭園のオランジェリー。


ヴェルサイユ庭園に先立つル・ノートルの代表作
ヴォー・ル・ヴィコント城の庭園。

円錐形や立方体などの幾何学形に刈り込まれた樹木や並木は
宮殿の建築様式のリズムを庭園にも反映し、
庭園の空間を建築の様式に調和させているとも言えますが、
人工的で好きじゃない、
不自然に刈り込まれて木がかわいそう、
という声も実はよく聞かれます。

フランス式整形庭園が
一世を風靡した少し後、
すでに18世紀には、
ヴェルサイユ宮殿の敷地においても
宮廷儀式に嫌気がさした王妃マリ=アントワネットが
プチ=トリアノンの離宮に作らせたのは
当時最新流行になっていたイギリス風の風景式庭園でした。

マリ=アントワネットは
「自然に帰れ」というルソーの影響のもと、
子どもたちへの理想的な教育のためもあり、
アモー(王妃の村里)を作らせて、
自ら農民風生活の疑似体験を楽しんだといいます。

このことからもわかるように、
時代によって人の求める理想や美の基準は変わる。
絶えず時代の空気は変わり、変遷していきます。

とはいえ、
どこまでも人工的な完成度を求めるかのような
フランス式整形庭園は
権力の象徴として造営された庭園のかたちであったとともに、
当時は自然と対峙した人間の技術力の限界への挑戦であり、
理想の美の表現の到達点であったのだのということも
忘れてはならないと思います。

単純に好き、嫌い、の個人の感性はとても大切です。
すべてそこから始めてもいいくらい、
自分の感覚を聴くこと、信じることは重要です。

例えば絵画作品を鑑賞するときにも、
予備知識など何も持たずに、
好きか、嫌いか、
どこが好きなのか(嫌いなのか)、
なぜ好きなのか(嫌いなのか)、
から見始めるのは結構おすすめです。

そしてその先に、
あまり好きじゃないけど、何かがある、
個人的には嫌いだけど、この表現は評価できる、
など、好き嫌いを超えた
それぞれの良さを見つける頃には、
自分自身の感度の幅が広がり、感性が磨かれ、
その作品に対する理解や愛が
より深まっていることでしょう。

庭園のスタイルに関していえば、
現代のガーデンデザインでも
フォーマル・ガーデンスタイルもあれば、
ナチュラル・スタイルのガーデンもあります。
何れにしても、
危機的な環境破壊、地球温暖化に直面した現代においては、
より地球に優しい、エコロジーを重視した
庭園づくりが欠かせなくなって久しい。

さらに、畳み掛けるように
世界がパンデミックに晒されているいま、
多くの都市が閉鎖され、
生活のスタイルを変えることを余儀なくされています。
これまで当たり前だったことがそうではなくなり、
必須と思われていたことがそうでもなかったり、
逆に見過ごしていたようなことが重要だったと気づいたり、
時代の風が確実に変わりつつあること、
あるいはもう変わっていることに
誰もが気付いているのではないでしょうか。

身近な緑の存在やガーデニングが
外に出られない人たちの
暮らしの潤いになっています。

そして一日も早く、
今は閉鎖されている公園や庭園も再び公開されて、
誰もが、思いきり太陽と風を感じて
思い思いに散歩ができますように。
新しい時代の風が
緑のかおりに満ちたものでありますように。

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