森の中のパリコレクション、ディオールの2020春夏
©VianneyLe Cher/AP/SIPA - www.journaldesfemmes.frより

ディオール2020春夏のパリコレはガーデンがテーマ

年末になってみると、
後で書こうと思って忘れていたことを沢山思い出して、
若干反省気味です。。。

そんな中の一つ、おお、と思っていたのが、
先だって行われたディオールの2020春夏パリコレクション
そのライト・モチーフはずばり「ガーデン」で、
ショーのためにロンシャン競馬場に
164本の樹木を運んで作られた
小さな森のインスタレーションの中で行われたのでした。

もちろん、会場のデコレーションが木々だということだけではなく、
エコ・プリントという、
草木をそのまま使って作るプリント素材

スイスの山奥で始まった、
自然と人間がどのように繋がれるかを目指したという
モンテ・ヴェリタ運動にインスパイアされたという
野の花ばかりをモチーフにしたプリント
生地などが
エレガントに使われた、ポエティックな、
とても素敵なコレクションです。

サスティナブルを目指すパリコレクション

ガーデンや森といったグリーンを
モードやインテリアに取り込むのは
しばらく前からだいぶ普通になっています。
今回のインスタレーションは、ジル・クレマンとも
よく一緒に仕事をしているペイザシスト集団Colocoが担当しており、
ショーでインスタレーションされた樹木はすべて
使い捨てられるのではなく、
その後パリ市内で緑化のために植林されます。

この「ガーデン」をテーマにしたコレクションは、
ムッシュー・ディオールの妹、
カトリーヌ・ディオールに
オマージュを捧げたものなのだそう。
彼女は戦争中にレジスタンス活動に身を投じたことで知られ、
また戦後の1950年代には、
自ら花を扱う会社を設立するなど、
常に時代の先を行く勇気ある女性であり、
また花々を愛し庭を愛するガーデナーでもありました。
ディオールのパルファン、Miss Diorは
ムッシューが妹カトリーヌに捧げた香りなのだそうです。
なんだか素敵な兄妹だなぁ。

庭園を愛するクチュリエ、クリスチャン・ディオール

実はムッシュー・ディオール自身も庭園愛好家で、
子ども時代を過ごしたノルマンディーのグランビルにある実家で、
若かりし頃には庭を自らデザインしていたことはよく知られています。
現在はディオール美術館となっている
グランビルのディオール邸には、
今も庭園があり、見学もできます。
ディオールの創造の世界を作りあげる
豊かな感性とエレガントなスタイルを生み出したのは、
まさに、自然と芸術を愛した母マドレーヌの趣味が行き届いた
この館と庭園だったとディオール自身が語っています。
詳しくはこちらをCLICK!

そのずっと後に、クチュリエとして成功したのちにも、
南仏プロヴァンス、香水で知られるグラースの近くで
ラ・コル・ノワール城 Château de la Colle Noire
を購入したディオールは
その周りに素晴らしい庭園を作り上げました。

© Christian Dior Parfums

(一旦は手放されたのち、再びメゾンが再入手して修復。)

多くのクリエーターがそうであるように、
クチュリエ・ディオールの美意識は、
身にまとうものだけに止まりません。
「貴方らしくない家に住むのは、
他人の洋服を着るようなものだ。」
と彼は好んで言っていたそうです。
自分自身だけでなく、
周りの環境含めてすべてが自分自身の表現である、
なるほどなと思います。
そしてこれはまたディオールが特別というわけではなく
自分らしい暮らしの場は
誰にとっても心地よいことでしょう。

庭づくりにもまた、その人らしさが出るとよく言いますが、
それは素晴らしいことだと思います。

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