ル・ノートルの傑作、ヴォー・ル・ヴィコント城の庭園 [その3]

フランス整形式庭園を支える思想

ル・ノートルによるヴォー・ル・ヴィコント城の庭園は
ヴェルサイユ宮殿の庭園の原型でもあり、
フランス整形式庭園の珠玉の名作と言われています。

ヴェルサイユ宮殿の庭園は、観光名所でもあり、
訪れたことのある方も多いでしょう。
その壮大さは今日でも圧倒的で万人の認めるところです。
でも、ヴェルサイユの庭園が大好き!と
いう方は少ないのではないかと思います。

ヴォー・ル・ヴィコントの庭園も、一般的には
もしかしたらそんなに魅力的に映らない可能性もあります。
それはなぜか?

それは近代から現代に至る間での
自然観の転換にあります。

ヴォー・ル・ヴィコントやヴェルサイユが作られた17世紀、
ルネサンスから展開する西洋の人間中心的な考え方のもとでは、
自然そのままの自然は野蛮なものであり、
人間が手を加えることで
自然が本来持つ美が引き出されるのだという
考え方がありました。

四角く、丸く、あるいは様々な形に刈り込まれた生垣や
トピアリーの幾何学的なフォルムは、
現代の私たちの目には人工的に映り、
自然のものとしては非常に不自然です。
壮大なパースペクティヴの創出の努力も
なぜそれがなされるのかは、
よくわからなかったり増します。

しかし、自然を我がものとしようとする思想が
その根底にあるとしたら?
当時の庭園の空間の造形が
よりよく理解できるのではないかと思います。


こちらは大運河(グラン・カナル)の外側にある
そのままに残された自然風景。
遠くに中世の石橋が架かっています。
完璧に整えられた庭園とコントラストをなす、
外側の自然を感じさせる風景。
この庭園内の私の好きな場所の一つです。
壮大な造形作品である庭園を散策する人たち、
無意識に、ここでちょっと一息ついていたのかもしれません。

まだまだ書きたいことは尽きませんが
今回はこの辺で。
お読みいただきありがとうございます!

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