イギリス・庭の旅が続きます。のどかな田園地帯の楽園のような庭に身をおくという至福の時間を過ごすと、都会のスピートの早さ、集中的人口密度に適応するのが若干厳しくなってしまいます。
ということで、ロンドンに戻ってきた時にはかなり緊張、というかあっという間に都会疲れ。人間心地のよい方向にはサッサと適応しきってしまうもので、戻すのがタイヘン。そんなロンドンでも、芝の美しい大きな公園がいくつもあって、旅行者にとってもよい気分転換に。
さらに、お気に入りのコージーなグリーン・スポットがガーデン・ミュージアムです。名前の通りの、庭園やガーデニングの歴史を扱う世界初の美術館で、古い教会を修築した趣ある場所です。
常設展示のボリュームは大きくないのですが、名だたるガーデナーやランドスケープ・アーキテクトたちの展覧会を行っており、今回はラッセル・ペイジ(Russell Page 1906-1985年)についてで、ぜひ見たいと思っていたものでした。
イギリスの造園家:ラッセル・ペイジ(1906-1985年)
ラッセル・ペイジは20世紀にヨーロッパとアメリカで活躍したイギリス人のランドスケープ・アーキテクト、ガーデンデザイナーです。
彼のクライアントは、プリンスエドワード公、ウィンザー公爵夫妻、ベルギーのレオポルド3世など貴族や大金持ちばかりのそうそうたるもので、イギリスのみならず欧州・米国の様々な場所で庭園設計を行っています。ニューヨークのフリック・コレクションの庭も彼の設計だそうです。
優れた庭園設計のためにはその土地の植生への深い理解が不可欠だといわれます。彼のように北半球・温帯気候のゾーンとはいえ、様々な場所で庭園をデザインするというのは、どのように可能なのだろうかと気になります。
それと、世界を飛び回って上流階級の人々の庭園設計をしながら、ラッセル・ペイジが自分自身の庭を持ったのは80歳になってからだったそうです。以前ポール・スミザー氏の庭造りのドキュメンタリーを見た時に、ポールさんは作庭する庭の近所の山を歩きまわって自生する植物を丹念に観察し、また自宅の自身のガーデンでは様々な植物を育てていて、必ずどんな環境に適応出来るのかしっかり観察してから、顧客の庭に使うと話しているシーンがあって、なるほどと思ったのですが、ラッセルさんの場合は、また違う方法を持っていたのでしょう。
実は彼がガーデンデザインについて書いた書籍が発売になっていて、これを読めばその辺のことがクリアになるはず!と思ったのですが、ペーパーバックでやたら分厚く、うーん、今すぐ読み切るのは難しい…とひるんでしまいまだ読んでません。とりあえず時間が出来た時の宿題にしておきます。
ガーデン・ミュージアムの庭~ノットガーデン
ガーデン・ミュージアムで好きなところは、展示に発見があるのもさることながら、カフェも庭も、とってもいい感じなのです。こじんまりしていて、コージーでホッとします。古い建物を上手に使っている場所で醸しだされる、なんとも落ち着いた昔と今の時間を浮遊できるような雰囲気が好きなのかなと思います。
建物が取り壊されるのを防ぎ、ガーデン・ミュージアムが設立された1980年に作られたこの庭は、16世紀から17世紀に活躍したイギリスの植物学者、ガーデナーでプランツ・ハンター、収集家でもあったトラデスカン父子にちなんで作られました。彼らは当時この地で、プランツ・ハンティングの旅から持ち帰った様々なものを収集しミュージアムを作っていました。現在の庭にはトラデスカン父子がアメリカ大陸やロシアやほうぼうから持ち帰った植物や、ここで育てていたけれどずっと昔に消え去ってしまっていた植物などを植栽しています。
[ハーブや野菜も混載、三角錐形の支柱が小枝なのがカワイイ、これはすぐに応用可ですよ]
[バラの季節はまだこれからですが、ナニワイバラのような美しい一重の白バラが咲き始めていました。バラと石壁ってやっぱりよく似合う。。。]
ちなみに、このミュージアムは公的資金援助を一切受けていないプライベートな団体の運営で、庭はミュージアムの園芸担当とインターンやボランティアによって管理されているそうです。
ダン・ピアソンの新しいパブリック・ガーデン
そして、こじんまりとしたガーデン・ミュージアムですが、拡張プランがすでに決定されている様子。新たなリサーチ・ルームや展示スペースなどの他、ガーデンには既存の教会の庭に加えて、ダン・ピアソンがデザインのパブリック・ガーデンが計画されています。そのため2015年の夏から一旦閉館し、一年後に再オープンとのことなので、お出かけになる方はお気をつけくださいませ。どんなガーデンが出来るのでしょうか、楽しみですね♬