シンプルライフなアーティストの家と庭|オキーフの家 写真集

シンプルライフのアーティスト版といえば、20世紀のアメリカを代表する女性画家、ジョージア・オキーフ(1887~1986)ではないでしょうか。

IMG_9423スティーグリッツの写真のモデルとなり、また画家としてデビューしたキャリアの前半と、ニューヨークのアート界の煩わしい人間関係などから逃れ制作に没頭できる理想の地を求めて、ニューメキシコ州、ネイティブ・アメリカンたちの土地に移り住み、孤高に過ごした後半生は、まるで別人のような違うトーンで彩られています。

スキャンダラスなインパクトを持ってアート界に登場した、そうせざるを得なかったオキーフでしたが、人生の後半には自己イメージを見事に塗り替えます。厳格さを漂わせた、ちょっと怖そうな老婦人となったオキーフのポートレートを見ると、それを成し遂げたのは彼女の強固な意志以外の何者でもなかったであろうことが容易に察せられます。

この写真集の表紙のオキーフは少し微笑んでいますが、こうした表情は大変珍しいのです。大体いつも、かなり怖そうに写っています。

サンタフェにはオキーフ美術館があり、彼女が住んだゴーストランチとアキュビューの家も残っています。アキュビューの家は、ニューメキシコの乾いた気候、強い日差しによく耐えるアドービ(日干しレンガ)を用いた土地の伝統的な建築様式で作られていて、有機的な質感と形がちょっとバーバパパの家のような。写真撮影は禁止ですが、ガイドツアーで見学が可能で、カルダーのモビールや、イサムノグチのあかり、彼女がコレクションした様々な石や水牛の骸骨や…これ以上なくシンプルで好きなものしか置いてない、極上の美意識、こだわりの集大成のようなインテリアは一見の価値ありです。

FullSizeRender-3余計なものを排除し形態の本質を捉える、同時に自然に繋がる美しいグラデーションの色彩が溶け込むモダンな作品と、彼女が暮らした家には、どちらにもオキーフの徹底的に研ぎ澄まされた美意識が隅々にまで行き渡っていて、そのことに強い感銘を受けました。環境とライフスタイルと作品とが一体となった自分自身の世界をここまでくっきりと作り上げることが出来るのは、一体どんな人物だったのかと、この家を訪れたときも、そして今でも、非常に心惹かれる憧れの存在です。

FullSizeRender-1そして、この家にはもちろん庭もあります。乾いた土地では水は重要なファクターで、水源を確保できたアキュビューの家の庭は、オキーフの念願であった野菜や果樹の庭になりました。

同じアーティストの庭といっても、ジヴェルニーのモネの庭とはだいぶ違う趣です。

とはいえこのよく手入れされ愛された実用の庭は、厳しい気候にも負けずに花を咲かせ、食物を供給してくれる、オキーフのライフスタイルに欠かせない大切な存在でした。実は彼女の料理の本も出ているくらい、料理にも関心の高かったオキーフは、オーガニックな庭の野菜や果物を食し、毎日近所の荒原を歩き…と一足先にロハスな生活を送ったアーティストでもあり、そうした暮らし方が功を奏したのか99歳まで生きました。
19世紀のフランス、まったく違う雰囲気の庭で後半生を過ごしたモネ(1840〜1926)も、そういえば料理には関心が高く、亡くなったのは86歳と長寿でしたね。しかもこの二人は誕生日がモネ11月14日とオキーフ11月15日で一日違いの蠍座仲間です。まったく違う作品世界と庭を作った違う時代の人たちですが、なんだか共通点が沢山出てきて面白いかも。モネは印象派の画家たちのあいだでも温厚な性格で愛されていたところはちょっと違うけれど。

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今日の最後に、こちらもオキーフの庭の一角。かっこいいです...。

モネの庭のことも後日ご紹介したいと思います☆

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