山のなかで(森のなかでも)しみじみと心地が良く感じられるのは、人間より木々の数がずっと多くて、ごくその片隅に紛れているような、人間が小さな自然の一部だという本来の感覚が戻って来るところじゃないかと思います。
街中にいると、人工の建造物や人間の数が圧倒的で、どんなに大きな木もようやく頑張っているかのような、大変そうな風情だったりすることはありませんか。勝手にそんな風に見てしまっているだけなのかもしれませんが。
ここは時々来る山のなかの、お気に入りの散歩道です。なんのことはない普通の道のようなのですが、かつては車が通る舗装された道路だったところが何年も前に閉鎖された後、アスファルトの亀裂から芽を出し、蔓を伸ばし、と植物たちがどんどん進出して自然に戻ろうとしている道なのです。
まだ春の初め、ようやく芽吹きの季節です。冬枯れたまま群生している地面の笹のクリーム色と上の方の若草色の小さな新緑と午後の日差しが絶妙に美しい午後でした。地面には雪の下で冬を越したカサカサした落ち葉やそこから芽を出す諸々の植物たち。もう少ししたらほとんど藪のようになってくるはず。植物たちの生命力があふれる散歩道です。
人がいなくなった世界はあっという間に植物に覆われていくだろうという、どこかで聞いた話がヴィジュアルになって頭のなかに広がっていきます(笑)。自然の庭と化した旧道の入口の崖の上、こちらもまた崩れかけて根っこも大分露出していて、若干心配なオオヤマザクラが見事な花を咲かせています。