庭好きなら、そうでなくとも京都で訪れたい庭は山のようにあります。今回は以前よりぜひ見てみたかった重森三玲のダミエ(市松模様)のお庭がある東福寺を目指しました。東福寺自体の敷地が広く、色々な建物があって、はてどこに行けば…?と焦りましたが幸い分かりやすく本坊庭園でした。本坊に隣接する通天橋はモミジの名所ですが、今はまだベイビーなモミジ葉たちです。
大方丈を囲む東西南北の庭には、北斗七星、蓬莱、瀛洲、壺梁、方丈、京都五山、須弥山、市松の八つの意匠が盛り込まれ、それは釈迦の入滅を表す「釈迦八相成道」にもあたることから、「八相の庭」と名付けられました。日本の伝統的な意匠・手法・様式を駆使して、しかも禅的なアプローチから、庭を作り変える際にその前にあった材料を再利用して作るという制約があるなかでの創作が生み出した姿は、まさに時代を超えるモダンアートのようです。お寺のサイトに説明があるので(図もあって、とても分かりやすいです)、詳しくはそちらへ(Click!)。
大方丈に向かって入口を入るとすぐ左側に北斗七星があります。丸いぐるぐるの文様は、南庭の枯山水の八海の表現にも続き、大方丈を背にして、左側に石組み、右のほうは京都の五山を表す苔山になっていて、苔が次のツツジの井田市松の西庭にいい具合につながり、ツツジの市松が、その次の北庭の苔と敷石の小市松につながってく、考え尽くされたゆるやかな各庭の意匠の変化には、なんだか音楽的という言葉が浮かびます。
庭園では、対峙するというより包み込まれるように感じることが多いのですが、こちらでは美術館でモダンアートの作品と対峙するような、不思議とそんな気持ちを引き出されました。作庭者の意図というか凄みを感じます。写真だけを見ていたらデザイン的なモダンさに目が行きますが、実際に訪れてみると、やはり写真だけでは感じきれない背後の広がり深さが忽然と現れます。美術作品もそうですが、やはり実物を見ることは大切と改めて思います。何より眼福です!その時々の自分自身のコンディションや知識経験の深まり度具合やいろんなことで見え方も変化するので、終わりなき楽しみ、ですね。
市松模様は日本の伝統的な意匠だそうで、そういえば桂離宮のふすまもブルーが印象的な市松模様だったな、あれもモダンで素敵だったのだけど、ダミエのシリーズをデザインしたヴィトンのデザイナーも同じように思うかしら。